JPAD

2型糖尿病患者におけるアスピリンの冠動脈疾患一次予防効果に関する研究

Japanese primary Prevention of Aspirin for Diabetes (JPAD)

〈試験背景と目的〉

欧米でのアスピリンの冠動脈疾患に対する予防効果に関する検討の結果、二次予防に関してのエビデンスは広く知られている(Antithrombotic Trialists' Collaboration (ATT), BMJ 2002;324:71-86)。冠動脈疾患の二次予防に関する2001年のAHA/ACCのガイドラインでも75-325mg/日のアスピリン投与が推奨されている、また、2002年American Diabetes Associationは、糖尿病患者において、禁忌でない限りアスピリンを服用することを勧告している。一方、日本では、ようやく2000年末に血栓症に対する予防薬として認可されたところである。

 欧米人と日本人では、血栓止血学的背景の人種差があると考えられていることから、上記の欧米でのエビデンスを、そのまま本邦でのアスピリン使用の根拠とするには危険がある。

本邦でのエビデンスは、熊本大学循環器内科が急性心筋梗塞発症患者における心筋梗塞再発の二次予防に対してアスピリンが有効であることをJAMIS Trial(Am J Cardiol 1999;83:1308-1313)で示したのがアスピリンによる動脈硬化性疾患の予防としては本邦ではじめてであった。しかし、糖尿病患者におけるアスピリンの一次予防効果に関する本邦でのエビデンスは皆無であり、わが国における本課題の検討が急務である。本研究においては、冠動脈疾患のリスクが高いと判断される糖尿病患者で、アスピリンの一次予防効果のエビデンスを構築することを目的とする。

〈対象〉冠動脈、脳血管を含めた動脈硬化性疾患と診断されていない2型糖尿病患者

・選択基準

  1. 年齢30歳以上85歳以下、性別は問わない
  2. 標準12誘導心電図で陳旧性心筋梗塞を示す異常Q波及び、虚血性心疾患を示唆するST-T変化を認めない
  3. 十分な同意が得られた患者

    ・除外基準

  1. 冠動脈疾患の既往のある症例
  2. 脳血管障害の既往(一過性脳虚血発作:TIAを含む)のある症例
  3. 内科的、外科的治療を要する脳血管、冠動脈以外の動脈硬化性疾患のある症例
  4. 既に抗血小板剤を投与している症例で中止あるいはアスピリンへの変更が不可能と判断された症例
  5. 重篤な消化性胃潰瘍を有する症例
  6. 重篤な肝・腎障害を有する症例
  7. アレルギーまたは薬剤過敏症の既往のある症例
  8. 心房細動のある症例
  9. 妊娠または妊娠の可能性のある症例
  10. 上記以外に主治医が不適当と判断した症例

    〈試験方法〉

    ・試験デザイン:アスピリン投与群と非投与群、無作為割付(封筒法)

    2群間比較試験(open, randomized prospective study)

    ・用法、用量:     アスピリン81mgあるいはアスピリン100mg投与群、アスピリン非投与群

    ・併用禁止薬剤:

    本登録後に、アスピリン以外に抗血小板剤(e.g. チクロピジン、シロスタゾール、ジピリダモール、トラピジル)、抗凝固薬(e.g. ワーファリンカリウム、アルガトロバン)、線維素溶解薬、および脱線維素薬の投与を原則として禁止する。ただし、心内血栓、脳血管、冠動脈を除く血栓塞栓症などにより、患者登録後にワーファリンを使用した症例については、予後調査票に記載し治療を継続する。

    ・調査対象症例の登録および追跡:

    封筒法によりアスピリン投与あるいは、非投与について、無作為に決定する。登録時の併用薬を確認し、登録調査票に記載する。

    追跡項目を以下のごとく規定する。

    1:心血管系要因による死亡

    2:非心血管系要因による死亡

    3:非致死的心筋梗塞の発生

    4:非致死的狭心症(安定、不安定を含む)の発生

    5:非致死的無症候性心筋虚血の発生

    6:非致死的脳血管障害の発生(明らかな一過性脳虚血発作:TIAを含む)

    7:内科的あるいは外科的治療を要する動脈硬化性疾患

    (大動脈、頚動脈、腎動脈、腸間膜動脈、末梢動脈等)の発生

    8:脱落:アスピリンの副作用等により同剤の中止を余儀なくされた場合は脱落とする

    以上の規定により、患者調査が終了した時点で予後調査票を記載する。

    ・観察期間:約5年間とする。2008年を最終年とする。

    ・統計処理:Kaplan-Meier法、Log Rank Test、χ2乗検定を施行する。

    ・経過:

同門の先生方を中心に全国の先生方から登録を頂きました。アスピリン投与群:1,266例,アスピリン非投与群:1,268例,合計:2,534例の登録がございました。2008年には小川教授がAHAのlate breaking sessionおよびJAMAにその結果を発表するに至りました。2011年には奈良県立医科大学から2つ(Saito Y, et al. Diabetes Care 2011;34:280-285, Okada S, et al. 2011;34:1277-1283)、2012年と2013年には熊大から2つ(Soejima H, et al. Circ J 2012;76:1526-1532, Soejima H, et al. J Cardiol 2013;62:165- 170) JPADサブ解析を発表しております。さらに2014年に奈良から1つ発表されました(Okada S, et al Circ J 2013;77:3023-3028)。ご協力いただきました先生方のおかげと感謝いたしております。今後は厚生労働省科学研究費の助成を受けJPAD3として引き続き追跡調査を進めて参りますのでご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。              (副島、小川)

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